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エッセイ テーマ「怒」

1800字エッセイ テーマ「怒」 檀 一二三  200901(火)晴れ

 取り留めもなくネットで脳と怒りの因果関係を検索する。いくつかネットサーフィンしてみた。関連するホルモンにはドーパミンやノルアドレナリン等があるようだ。詳しいことは専門家に任せるとして、とにかく怒は健康によくない。笑っていた方が良いという。健康推進派としては、怒という感情はあえて触れない方が良い。確かに怒が無かったら戦争も少なくなるだろうし平和も望めるだろう。それでは怒は悪で笑は善と言えるのか? 更に疑惑が広がる。人は元来善か悪か? この永遠の問いに以前は随分悩んだものだ。ある人の主張によると、人は生まれながら善人で、環境によって悪を知るとか知らないとか。未熟で一寸先の将来が見えない青年時代では大変興味があった。それから随分と時間が経った今、そういうことはどちらでもよくなった。その要因は一体何だろう。根気が無くなった、あるいは悩が退化した?
 今年の正月、久しぶりに出会った高校卒業間近の姪が話していた。自分の成人式の時には、キラキラとして、しかも高く盛り上げた豪勢なヘアスタイルで参加したいという。道徳的な話題よりも目立つことが楽しいそうだった。検索によるとこれがアドレナリン、副腎髄質ホルモンと呼び、交感神経を刺激して分泌されるとある。脈拍が早くなり血圧が上昇するこのホルモン、キラキラする時だけではなく、闘争心を持った時にも分泌されるらしい。闘争心と怒は同類ではなかったか。この不思議な輝きと闘いの感情を更に掘り下げてみたくなった。
そこで、怒の語源を深読みする。その部首の構成は女と又と心、この三つの漢字の象形的構成が興味深い。そもそも、なぜ左偏上部の部首は女なのか。差別的ではないだろうか。仮に左偏を力、右偏を又とする。その方が怒の見た目の漢字の構成が良い。納得いかない点はまだある。上部右偏の部首の又も気に入らない。又は股の一部で月偏は肉を意味する。肉の又などという表現は、近年よく話題になるセクハラにはならないのか。そこで怒という文字は、右偏上部の又を口という字にしてみたくなった。上部部首の構成は加となる。不可解なことは下の部首の心。怒に心などは不要ではないのか。必要なことは激しい感情とむしろ容赦のない攻撃に近い要素。もし長寿を全うしようと願うならばこの容赦ない攻撃的感情は、むしろ一旦横へ取り下げた方が良いらしい。しかし一度生じた怒を止めるのは容易ではない。聞くところによると、そこはまさに訓練だという。数秒でいい、一呼吸してゆっくりと息を吐き、怒をひとまず横に置く。すると一瞬心が落ち着く。つまり怒の下の部首の心は感情を表す意味であった。確かに辻褄は合ってきた。再考した結果、怒という漢字は力と口と心となった。
 日本女性解放運動の先駆者、平塚らいてうさんの主張によると、なんと女性は太陽だという。ということになると、怒という字の左偏上部の部首は女偏に戻さなければならない。結局怒は女、口、心という構成になる。これが辿り着いた怒りという漢字だった。
ふと頭を上げて何気なく見た居間の棚。額縁に入れられた古い新婚旅行の記念写真に目が釘付けになった。なんと評価すべきか、眼光輝き頬骨は尖り頭部には黒髪が光っていた。この人生最高の幸せの時間になぜ、そんなに厳しい表情で立っているのだ。我ながらその前方を見据えた姿に絶句する。人はなぜ怒る? しかし本来の怒ではない。若き自分の立ち位置を固辞する闘争の姿でもある。先の読めない不可解な敵との闘争は生きる原動力だった。空腹になると食欲が、子孫の種を残そうとすると性欲が湧く。その行動は責任感や達成感などではない。むしろ野性的な欲望に似ている。行動の原動力は欲望、欲望は生命力、生命力は怒のエネルギー、エネルギーは自身の躍進から向上心へと繋がった。向上心を伴う活動は圧し掛かる困難を振り払い、挫けかけても立ち上がり、人格をプラス思考へと導いた。こうして過去を俯瞰してみた時、怒の深層は他にあるような気がした。
怒は忿怒ではない。生命のエネルギー即ち、無垢で穢れのない心ではなかったのか。果たして怒の辿り着く場所、それは愛の心だった。
 怒という漢字を深読みしていくうちに、どこからともなく穏やかな気持ちが漂ってきた。交感神経から愛情ホルモン、オキシトシンが分泌されていたのだろう。
 今さらだが、文筆という行為は、怒りという言葉のストレスを痰壺に吐き出していたに過ぎなかった。
 怒りの痰壺はやがて醗酵し、愛の芳香を醸し出すに違いない。

--檀--
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