FC2ブログ

創作小説続(10~12)「戸森元」 接客

創作小説 続(10~12)「戸森元」 接客 

前回の荒筋 須浪に振られ、改めて自分らしさは何かを見詰め直した。卒業を来年に迎え就活を始める。当時経済発展に乗じてマンション建設が急増していた。就職したのは『不動産・くらや』だった。

10 接客
都会の街路樹にも桜の花が満開となっていた。元は事務所で電話の対応に追われていた。
「戸森君、不動産契約書の書類の作成を手伝ってくれないか」
 部長の小川さんから声を掛けられた。夜七時から分譲マンションの仲介契約があるらしい。一戸三千五百万円の物件である。時間が差し迫っていたようだった。五時近くに書類は出来上がった。その日、元は小川さんに同行した。初めての契約の立合いだった。それ以来小川さんは、書類作成時には元を助手に使った。
 小川さんは普段無愛想で近寄りがたいが、お客様が来ると表情が一転し笑顔になる。背中を丸め前かがみになりながら、お客様に近付き、テーブルへの着座を誘う。接客中は笑顔を絶やさなかった。その表情の切り替えは見事で、そうして元は、小川さんに接客サービスのコツを習ったのである。

11 不眠不休
 元は携帯電話を睡眠中も枕元から離さなかった。夜間電話が掛かると、翌日物件の確認に出かけた。
 問い合わせの物件の環境については、ゴミ置き場やその清掃状態、常夜灯の数と、周囲の明るさや玉切れの有無、車や民間駐車場などの騒音、近隣住宅の玄関周りの整備状況、犬や猫などの徘徊の有無、また雨天時のU字溝などの道路の排水状況、更に近隣のゴミ屋敷等の有無なども調べ上げた。
 こうした住宅環境の細かい下調べは、大いに顧客に気に入られた。不眠不休に近い対応だった。
 入社して一年目の新年を迎えた。店長の挨拶の中で元の成績は社内でトップだという報告があった。新人の初年度トップ成績は前例がないらしい。
 元は担当する顧客の増加に伴い、通勤時間の短縮と住宅環境と家賃を考慮し、蟹井新田に引っ越すことにした。
 春の兆しが見え始める三月の初めだった。佐根川周辺には釣堀場が多い。釣堀用の温泉養殖場や室内釣堀場もある。四季を通じて釣りが楽しめる。
 昼夜区別なく続く仕事に、自由な時間は少なかった。
 釣堀は、緊迫した日常において、その存在だけでも癒しのオアシスといえる。イケヤで家具も数点買った。将来の引越に備え、身軽でなければならなかった。
 元は家族から心身ともに独立したのである。
 その春、女子新入社員倉田きみこが、事務職として入社してきた。身長百六十センチほどで、黒髪のポニーテールと濃い眉とふくよかな唇が印象的だった。倉田の入社時の挨拶の時、偶然にも元の専門学校の後輩と知った。彼女の学んだ専門とは異なり、不動産会社への就職には違和感もあったが、父親の経営する建設会社の不動産部門設立のための見習い修行ということだった。
 以来元はひそかに親しみを持って“きみこ”と呼ぶことにした。
 元は『不動産・くらや』の入社一年にして、トップセールスマンとなった自負があった。賃貸だがマンションも借りた。いつかは倉田をマンションに誘い、魚料理の腕を披露したいと思った。

12 野心
 きみこが入社して一か月が過ぎようとしていたころだった。時期尚早と思ったが、後輩という親近感もあって、元はきみこをカラオケに誘った。
「私、カラオケ上手くないし、戸森さんのこともあまり知らないし、ごめんなさい」
「こっちこそ突然でごめんね。今度君の都合のいい日にもう一度誘ってもいい?」
「はい」
 昨年度の元の成績は、当然きみこも承知していた。誘いはパワハラの瀬戸際だったかもしれない。
受注成績は第一に個人の実力によるが、それに加えて、需要者と供給者の出合いと、時の運が重なることが多い。つまり昨年の元の受注成績はたまたまだった。若さゆえ、勢いに乗った幸いな結果ということに、元は気づいていなかった。
新入社員だったきみこへの誘いは、元の未熟な気負いだったかもしれない。
元は自信に満ち溢れていた。
自信はやがて野心となり、無謀にも、翌年の春には独立を目指していたのである。
                  ―完結編へ続く―
スポンサーサイト



令和の活動家

令和の活動家 200805(水)晴れ

人は活動を続けると年齢がスライドする?
その昔論語では、「六十にして迷わず」と詠われました。
昨日頂いた同人誌「きなり」の会員さんの皆様のお写真を拝見して、今更ながら驚いています。
令和の活動家は、「七十は青年、八十は現役、九十は定年」と言えそうです。
そんな錯覚をしてしまいました。
しかしながらその錯覚は、自身の目指す希望でもあります。

暑い日々が続くなか、近隣地域でもコロナ感染者が発生してきています。
世相におけるオリンピック開催熱望のクールダウンと共に、国内経済はコロナ感染拡散と共生せざるを得なくなってきました。
くれぐれも熱中症と感染にはご注意下さいませ。

明日も良い日でありますようにーー。

戦闘機「ステルス」 ?

戦闘機「ステルス」? 300803(月)晴れ

最初燕は玄関に巣を作りました。その雛はすでに巣立っています。
その後バルコニーにはもう一つ巣があって、その雛が昨日巣立ったのです。これらの雛はてっきり他人どうしかと思っていたらどうもそうではなさそうです。
1IMG_9711.jpg

餌を待つバルコニーの燕の雛。
2IMG_9729.jpg

しかし親鳥は餌を与えません。
3IMG_9737.jpg

何度も巣の傍まで飛んできています。
4IMG_9716.jpg

仲間達も入れ代わり立ち代わり、雛の巣立ちを促しているのです。
5IMG_9747.jpg

次の日、雛は巣立ちました。
応援していた燕はみんな仲間でした。
颯爽と飛ぶ姿は、戦闘機「ステルス」に似てはないですか?
子どもを励ます様子は実に感動的でした。
プロフィール

モザマスター

Author:モザマスター
キャフェ ド モザのマスターです!
担当はドリンクとフロアのサービスです。
花の愛好家です。
季節の花の写真をアップしています。
キャフェ ド モザのホームページ:www.cafedemoza.com

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
プロフィール

モザマスター

Author:モザマスター
キャフェ ド モザのマスターです!
担当はドリンクとフロアのサービスです。
花の愛好家です。
季節の花の写真をアップしています。
キャフェ ド モザのホームページ:www.cafedemoza.com

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR