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続『小森 元』(完結編)(2)~(3)

続『小森 元』(完結編)(2)~(3)  ダンヒフミ

 《前編のあらすじ》 1 ロールケーキ 
『不動産・くらや』の初年度の売り上げ成績は店内トップだった・。翌年新入社員として入って来た倉田きみ子は元の卒業した学校の後輩だった。元はきみ子をデートに誘った。しかし話題は仕事意外には広がらなかった。二回目のデートに誘った。

(2)文鳥
きみ子のお気に入りの店は、名古屋城テレビ塔の下にある『バルン』というレストランだった。ふわとろオムライスが人気で、普段の日でもランチの時間には長い行列も出来るらしい。ケチャップライスに乗せられた半熟卵焼きを縦に分けるように切り広げる。中からクリーミーな卵がトロリと横に広がる。そのゆっくりとした動きに思わず唇が緩む。
食事を終えティーサービスの時だった。
「私、文鳥が好きなの」
ウフッと一人笑いしながらきみ子は話しだした。過去にきっと面白いことがあったのかもしれない。
「僕はあんまり鳥のことは詳しくないけど、どんな文鳥がいいの? 例えば大きさとか色とか」
「それはどちらでも良いの。私が飼っていたのは白の小さい鳥よ。嘴が小さくてね。仕事から帰って、ただいまと言って声を掛けると、羽根をバタバタさせてとても喜ぶの。まるで私の言葉が分かるみたい」
「それで、その後どうなるの?」
「もう、はじめさんたら。どうなるのって、鳥も生き物よ。二人でお話しするの。今日は暑くなかった?とか、のど渇いていない? なんて話しかけるとキュッキュッと鳴くの。昼間誰もいないからきっと寂しいのね。鳴き始めたら止まらないのよ。しばらく眺めていると一日の疲れが取れ、仕事が終わったって感じもするわ」
元は今までペットは一度も飼ったことはない。しかし話を聞いているうちに、きみ子の少しすぼんだ口と文鳥の嘴が重なってきて、文鳥が好きになりそうになった。

灰色の絨毯を敷詰めたような雨雲の隙間に、底なしの青い空が覗く。平らに広がった田園の中に盛り上がる小さな林から、梅雨明けを告げる蝉の鳴き声が聞こえてくる。夏の知らせだった。
元はその日、以前から管理していた顧客と不動産の仲介契約を済ませた。自社物件の分譲地で、近隣の住宅環境も良く、商業施設や交通などの利便性も良い。契約は今月になって二件目だった。仕事は順調に進んでいるように見えた。仲介又は契約作業はさすがに緊張が続く。一息ついて、安堵と疲れが一気に出た時だった。心の隅にほろ苦い初恋の思いが蘇ってきた。 
元はまだ愛の存在は理解していない。唯一あるとすれば、陽炎(かげろう)のように淡い片思いの記憶だった。不幸にも心の深層に、きみ子と過去の初恋の女性とが重なっていたのである。
元はすでに恋の病に侵されていた。

(3)告白
六月の半ば頃だった。駅東のアーケド商店街にある『ビロング』という洋食店にきみ子を誘った。最近顧客管理の夜訪が続いていた。
その日夕食はハンバーグ定食を、きみ子は春野菜定食を食べた。食後のケーキセットは、カプレーゼとダージリンティーを選んだ。チョコレートケーキに生クリームとレモンゼリーが添えてある。チョコとその中に入った胡桃(くるみ)と甘酸っぱいクリームレモンの食感が心地よい。満たされた二人の時間だった。 
「美味しかった?」
元はティッシュで口元を拭きながらきみ子を見た。テーブルの上には、赤い布で覆われたシェードランプが吊り下げてあった。元を見詰めるきみ子の瞳や頬に深い陰影が出来る。黒い影になった瞳は微笑みか寂しさか、そのすべての仕草を包み込んでいた。二人の間に静けさが漂う。
「少し大事な話ししたいけどいい?」
「なに?急に、大事なお話って」
元は大きく息を吸い込み、
「これからのお付き合いのことなんだけど、僕は君と会っている時とても楽しい。深夜の仕事が続いた後、電話で話したり一緒に食事をしたりしていると疲れを忘れてしまう。できればいつまでも君と楽しく過ごしたい。こんなことを言うのは自分勝手だと思うけど、どうすればこの癒された気持ちが続くのか自分なりに考えてみた。変だと思われるかもしれないが、思い切って今言う。きみ子さん、ぼくと同棲して下さい」
頭を下げ、言葉を吐き出すように言った。恋煩(わずら)いの反動かもしれない。
「ちょっと待って、待ってくれる? はじめさんのお気持ちは分かるよ。でも、突然そんなことを言われても、わたし返事のしようがないわ。なぜ同棲なの? まだお付き合いしてそんなに長くないよね。元さんのことは嫌いじゃない。好き。だから一緒にいて楽しい。でもこの先ずっとそうかと言われると自信がないの。ここまで育ててくれた両親の気持ちも考えてあげたいし、それよりも私、もっとはじめさんのことを理解したい。同棲とか結婚とかについては、もう少し時間がいるような気がする。でも嬉しい、そんなふうに私のこと思って下さって」
きみ子は一人俯いてしまった。
「僕はきみが入社した時からこの人だと思った。本当にそう感じた」
「だってたとえば、何か他の考えや選択肢はなかったの? 自己紹介のころならいろいろあるはずよ」
暗闇に光るペンダントライトに照らされたきみ子の顔色が、白く透き通っている。
「確かにそうだ。でも直感だから」
「同棲ということは結婚を前提としてという意味よね。私、ますますあなたのことをもっと知りたくなったわ。正直私、今は結婚という気持ちはとても持てない。それで良ければお付き会いする」
きみ子は意外にも冷静だった。あまりも唐突な元の行動に興味が湧いたのである。元は直感という不可解な理由を挙げた。悪い人ではない。一途な性格であること、コミュニケーションの思考性が少し異なるだけだと思う。純粋な性格かもしれないが、結婚はまだ無理だと思った。しかし、同棲もありうるかも・・。
きみ子は同時に不信感も湧いて来た。元は何か不都合なことを隠しているのではないだろうか。
「確かに直感だけど、僕は君と一緒にやっていきたい。いや、やっていく」
「直感と言われても・・」
その後の言葉が出なかった。元の姿勢に偽りが感じられなかったのである。
「はじめさん。私子供じゃない。あなたの人柄や気持ちは以前から尊敬している。こうしてはじめさんの気持ちを言ってもらって私、とても嬉しい」
黒い影で包まれたきみ子の頬から一筋の涙が伝わっていた。その流れを隠すように髪の毛で顔を覆った。

元は高校時代から友達は何人かいた。しかしその仲間達と一緒に行動を共にすることは少なかった。なぜかいつも一人で過ごす時間が多かった。両親には不自由なく育ててもらったと思う。しかし心はいつも満たされていなかった。その気持ちは専門学校で学業とアルバイトなどしていくうちに少しずつ変化していった。職場では些細なことが原因で、従業員や顧客と感情的にぶつかり合うことも多かった。そんな元の未熟な心の感情の中にきみこは凄然と現れた。そして直感と言って同棲を迫った。元は自問自答した。
「僕は何かが変かも・・」

元に欠けていたのはコミュニケーション力だった。
父は仕事人間だが、母は元にとって最も良き理解者であり味方でもあった。ただ、元は母と何を話せばいいのか、たとえ話したとしてその話題をどう広げて行けば良いのか元には分からなかった。それでも不都合は何もなかった。きみ子に惹かれたのは、その容姿に包まれた温もりと優しさだった。つまり元はきみ子に対して、自分の気持ちを分かち合える母性像を感じたのかもしれない。これは異性を意識した恋愛の始まりでもあった。
 
ーー完結編(4)へ続くーー
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『小森 元』(完結編)

『小森 元』(完結編) ダンヒフミ

 《前編のあらすじ》
戸森元は進学を諦め選んだ道はフリーター。学業から解放され、毎日釣り三昧を楽しんだ。ある日親友達と再会。彼らは輝いて見えた。対照的にフリーターの自分に羞恥心を抱く。自分探しが始まった。一転して専門学校に入学。電車通学中にスリと間違えられる。偶然にも商店街で須波美穂と再再開。勇気を出してデートに誘うが軽く振られた。たびたび起こる不名誉な出来事に自分を見つめなおす。ファッション、読書、スポーツジム通い等を始める。自我意識の始まりだった。就職したのは『不動産・くらや』。仕事は不眠不休だった。新入初年度で社内のトップセールスマンとなった。専門学校の後輩である女子新入社員、倉田きみ子をデートに誘う。

1 ロールケーキ 
西の山の麓にはどんよりとした霞が横たわっていた。一晩中吹き荒れていた春嵐は灰色の霞みを一掃し、空気は限りなく透明度を増していった。
穏やかな日和の一日が終わり、陽は瞬く間に山の端に落ち、茜色が空の真上まで広がった。
八日市駅バスターミナル周辺の雑踏の中、元ときみ子はスクランブル交差点を渡っていた。目前に八階建ての複合ビル『ロイ・プラザ』がある。そこにはレストランの他ブティックやアクセサリーなどの雑貨店や無印店などが並び、十代から二十代の若者達が多く集う。
その日は五月の大型連休の初日だった。店内は若い熱気に満ち溢れ、白い大理石の床には雑踏の靴音が広がっていた。春の装いはパステルカラー、ビルの入口の自動ドアが開くたびに、緑や黄色のボタニカル柄のワンピースなどがそよ風に揺れる。
『リザ』は一階ホールの右奥にある。SNSによるとロールケーキとブリュレの書き込みが多い。正面の二つのアーチは店のシンボルデザインである。一つは窓に、もう一方は出入り口になっている。木製の玄関ドアのノブに当たる夕日の輝きが眩しい。引き込まれるようにドアを開くと、入り口のすぐ右側の窓際の席が空いていた。肘掛のない臙脂(えんじ)色のビロードのソファだった。
二人でメニューと向き合っていたが、人気のスイーツの一つ、ロールケーキとアッサム紅茶を注文することにした。しばらく沈黙が続いた。元の顔には笑顔が消えている。店内の人の動きがスローモーションに見える。元は緊張していたのである。
「あの、すみません、君の都合も聞かずに無理に誘って」
「ぜんぜん大丈夫です。他に約束もなかったし」
「良かった、ところで仕事なれましたか?」
「はい、少しだけ」
唇から笑みがこぼれた。
「戸森さん、一つだけ聞いていいですか、昨年の社内の成績がトップだったと聞いていますが、なにかコツとかあるのですか?」
元の得意分野の話題である。思わず胸の鼓動が高まる。 
「方法は人それぞれだと思いますが、僕はお客様とお会いした時に、その方と契約している笑顔を想像するのです」
元は思った。これは今日話したいことではないと。話したいことは二人の私的な話であって仕事ではなかった。
きみ子は、もう一度椅子に深く座りなおした。
「それって、イメージするとなんでも実現するのですか?」
「いえ、仕事の場合だけです」
きみ子は身を乗り出した。元は少し怯(ひる)んだ。会話に笑いがない。
「もう一つだけ聞いていいですか?」
「はい、なんでも大丈夫です」
「それじゃー、例えば今日私を誘った元さんのイメージはどんな感じ?」
きみ子は少し首を傾げ元を見詰めた。今度は唇が少し窄(すぼ)んでいる。
聞きたいことってそれ? 全然大丈夫ではない。もっと楽しいことかと思った。
思いがけない会話の返球に元は慌てふためいた。イメージではない。きみ子を誘ったのに理由がある。
「君が可愛いと思ったからです」
「私が?ほんと?嬉しいー」
意外にもきみ子の声が弾んだ。良かった、こんなことで喜んでくれるとは。
若いウェイトレスがケーキと紅茶を持ってきた。
「ご注文は以上でよろしかったですか?」
「はい、ありがとうございます」
黄色いスポンジにマロンクリームがたっぷりと巻かれ、その隅にはアップルミントの葉が添えてあった。
「うわぁ、おいしそー」
「ここのロールケーキはお店の一番人気なんです」
スイーツの話題でなんとか盛り上げたかった。
「はじめさん? ここではですとか使わなくても大丈夫よ」
「分かった、ありがとう」
何気ない救いの一言だった。肩の力が抜けたようだった。テーブルの周りにアッサム紅茶の香りが漂っている。
「倉田さん、今日は楽しかった。良かったら今度別のところに誘っていいかな? 僕、名古屋城駅の近くにフランス料理のおいしい店を知っているし」
実は元はその店には行ったことがない。先輩から聞いた店だった。とっさの誘いだった。このまま何もなく終わりたくなかった。なんとか次の機会に繋げたい。
「それじゃそのお店にはいつか行くわね。でも私のお気に入りのところもあるけど、一度そこでもいい?」
「大丈夫、僕、土曜日に電話する」
今まさにデートは終わろうとしている。熱くなった胸の鼓動は収まりそうにもない。私的な時間を初めて過ごした。できれば家の近くまで送りたいと思った。
「私も楽しかった。本当にありがとう」
二人は席を立ちあがり、元はレシートを持って立ち上がった。
二人は『リザ』を出た。元はきみ子を自宅の近くまで送りたいと伝えたが断られた。当然かもしれない。きみ子はまだ送ってもらいたいという思いも理由もなかったのである。
白い雲の端が眩しいほど銀色に輝いている。歩道の上で渦巻く小さなつむじ風で髪の毛が揺れている。きみ子は笑顔で振り返り、片手で肩を覆う髪をそっと抑え、胸の前で掌を広げ、小さく軽く振って去って行った。
 短い時間だったが、親近感を深めた初めてのデートだった。

-続く-

創作小説続(10~12)「戸森元」 接客

創作小説 続(10~12)「戸森元」 接客 

前回の荒筋 須浪に振られ、改めて自分らしさは何かを見詰め直した。卒業を来年に迎え就活を始める。当時経済発展に乗じてマンション建設が急増していた。就職したのは『不動産・くらや』だった。

10 接客
都会の街路樹にも桜の花が満開となっていた。元は事務所で電話の対応に追われていた。
「戸森君、不動産契約書の書類の作成を手伝ってくれないか」
 部長の小川さんから声を掛けられた。夜七時から分譲マンションの仲介契約があるらしい。一戸三千五百万円の物件である。時間が差し迫っていたようだった。五時近くに書類は出来上がった。その日、元は小川さんに同行した。初めての契約の立合いだった。それ以来小川さんは、書類作成時には元を助手に使った。
 小川さんは普段無愛想で近寄りがたいが、お客様が来ると表情が一転し笑顔になる。背中を丸め前かがみになりながら、お客様に近付き、テーブルへの着座を誘う。接客中は笑顔を絶やさなかった。その表情の切り替えは見事で、そうして元は、小川さんに接客サービスのコツを習ったのである。

11 不眠不休
 元は携帯電話を睡眠中も枕元から離さなかった。夜間電話が掛かると、翌日物件の確認に出かけた。
 問い合わせの物件の環境については、ゴミ置き場やその清掃状態、常夜灯の数と、周囲の明るさや玉切れの有無、車や民間駐車場などの騒音、近隣住宅の玄関周りの整備状況、犬や猫などの徘徊の有無、また雨天時のU字溝などの道路の排水状況、更に近隣のゴミ屋敷等の有無なども調べ上げた。
 こうした住宅環境の細かい下調べは、大いに顧客に気に入られた。不眠不休に近い対応だった。
 入社して一年目の新年を迎えた。店長の挨拶の中で元の成績は社内でトップだという報告があった。新人の初年度トップ成績は前例がないらしい。
 元は担当する顧客の増加に伴い、通勤時間の短縮と住宅環境と家賃を考慮し、蟹井新田に引っ越すことにした。
 春の兆しが見え始める三月の初めだった。佐根川周辺には釣堀場が多い。釣堀用の温泉養殖場や室内釣堀場もある。四季を通じて釣りが楽しめる。
 昼夜区別なく続く仕事に、自由な時間は少なかった。
 釣堀は、緊迫した日常において、その存在だけでも癒しのオアシスといえる。イケヤで家具も数点買った。将来の引越に備え、身軽でなければならなかった。
 元は家族から心身ともに独立したのである。
 その春、女子新入社員倉田きみこが、事務職として入社してきた。身長百六十センチほどで、黒髪のポニーテールと濃い眉とふくよかな唇が印象的だった。倉田の入社時の挨拶の時、偶然にも元の専門学校の後輩と知った。彼女の学んだ専門とは異なり、不動産会社への就職には違和感もあったが、父親の経営する建設会社の不動産部門設立のための見習い修行ということだった。
 以来元はひそかに親しみを持って“きみこ”と呼ぶことにした。
 元は『不動産・くらや』の入社一年にして、トップセールスマンとなった自負があった。賃貸だがマンションも借りた。いつかは倉田をマンションに誘い、魚料理の腕を披露したいと思った。

12 野心
 きみこが入社して一か月が過ぎようとしていたころだった。時期尚早と思ったが、後輩という親近感もあって、元はきみこをカラオケに誘った。
「私、カラオケ上手くないし、戸森さんのこともあまり知らないし、ごめんなさい」
「こっちこそ突然でごめんね。今度君の都合のいい日にもう一度誘ってもいい?」
「はい」
 昨年度の元の成績は、当然きみこも承知していた。誘いはパワハラの瀬戸際だったかもしれない。
受注成績は第一に個人の実力によるが、それに加えて、需要者と供給者の出合いと、時の運が重なることが多い。つまり昨年の元の受注成績はたまたまだった。若さゆえ、勢いに乗った幸いな結果ということに、元は気づいていなかった。
新入社員だったきみこへの誘いは、元の未熟な気負いだったかもしれない。
元は自信に満ち溢れていた。
自信はやがて野心となり、無謀にも、翌年の春には独立を目指していたのである。
                  ―完結編へ続く―

暑中御見舞い

暑中御見舞い 200812(水)晴れ 無風

さすがに今日は外に出たい気がしませんでした。
みなさま、暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか?
兼ねてから計画していた小鳥の水飲み場を作りました。
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その第一号は左端に見えている陶器の皿でした。皿の廻りに止まり木もつけたのですが、どうも小鳥たちには人気はなかったようです。ある日小鳥が皿の縁に止まり、水を飲もうとしたら水底が浅くすぐに飛び立ちました。改めて少し深い皿を見つけてきました。できれば水も浴びて欲しいと思ったのです。ところが早速新しい水飲み場に来たのは蛙でした。キャベツソースの二度漬け禁止のように、蛙の二度水浴びは止めて欲しいと願っています。今のところペットボトルはまだ完成していません。もう少し安定するように改良したいと思っています。
今日みたいに暑い日こそ読書三昧しようと思いつつ、実際には雑用ばかりしていました。譲って頂いた本が三冊、すでに読みかけの本が三冊の他、
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最近購入したばかりの本が一冊、全部で七冊あり、コロナ休業は苦しい選択でありながらも楽しみでもありました。ところがその間実際に出来た事は今までに手が付けられなかった庭の手入れや家のメンテナンスに追われる毎日でした。明日は盆の入りでご先祖様のお迎えもしなければなりません。仏壇の掃除や一日三度のお供えなどの用意もあります。
今年のお盆はコロナ感染防止を踏まえ、子供達も帰省を諦めるとのことで少しはゆっくりできるかもしません。孫たちは親にとっては元気を運ぶコウノトリで、会えばあったで元気を貰えますが、何事も抗えず自然に任せるのが一番と考えております。
又時間が出来れば、それこそ読書三昧を楽しみたいと思っております。
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猛暑の続く日々、どちら様もくれぐれもお身体ご自愛くださいませ。

創作小説続(7~9)「戸森元」

創作小説続(7~9)「戸森元」
前回の荒筋 その日は風邪気味だった。帰宅途中八日駅で偶然須浪に会う。須浪は進学のきっかけにもなった元の初恋の女性でもあった。勇気を出してデートに誘ったが断われた。一年ぶりの絆は消失した。
 
7 自我意識
 須波に振られた。元はしばらく立ち直ることが出来なかった。本当に振られたのだろうか。須波は本当にその日体調を崩していたのか。高校時代から抱いていた須波に対する好意は、元の単なる独りよがりだったかもしれない。
「おい元、しっかりしろ」
 再び大きな声が聞こえてきた。思わず元は振り返った。誰もいない空耳だった。元の心の叫びを聞いたのである。
 ゆっくり頭を垂れ、そして呟いた。
「自分らしさを創らなくては」
 元の行動は機敏だった。
 これまでの学生生活は、授業の単位取得と、学費の補填しか念頭になかった。それだけでは自分らしさを出すことは出来ない。自分の魅力とは何だろう。学歴でもなく偏差値でも顔でもスタイルでもないとすると、他の人が持っていないもの、つまり個性ではないだろうか。それならば、いかに個性は創ることが出来るのか。
 とりあえず、ビジュアルなファッション感覚を学ぶことにした。これは親友でもあった自己顕示欲の強い武の影響にもよる。
 元は駅前ショッピングモールに並ぶブティックのマネキンの衣装を見て廻った。生地にも触り、その感触を確かめた。本屋にも出かけた。書店の推奨する文学書も手あたり次第読みあさった。床屋での散髪を美容室に変え、自分に適した髪形にカットしてもらった。髪形による個性の表現の仕方もあることが分かった。スポーツジムにも出かけ、ランニングマシーンで汗を流し、トレーニングマシーンで筋力も鍛えた。気のせいだと思うが、トレーニングしている時、鏡に映る身体が、最近シュッとした感じに見えるようになった。
 最近、ショーウインドーに映る自分の姿を追いかけるようになっていた。
 遅かった元の自我意識の始まりだった。

8 卒論
 二学期の後期授業が始まった。
 アニメファッション科には海外留学制度があった。留学は単位の一つに認められる。元の進学校選択の大きな理由の一つだった。そのために夏休みには昼夜仕事に励み、ある程度まとまった貯蓄もした。五泊七日の短期留学だが、元はフランス・パリ留学を選択した。パリのファッションに憧れていたのである。
 卒業課題は論文とデザイン画だった。論文は平成アニメの特性を、一方デザイン画は、コミックマーケットなどで観られるアニメファッションの商業進出の特性をそれぞれテーマにした。
 平成アニメの特性は、CGと人の動きの一体化である。ダンサーの身体全体にセンサーを付け、人の動作と共にその動きをパソコンに取り込む。その信号は瞬時にCG化され、レーザー光線により三次元で表示された人形が人と同様な動きをする。つまりプロのダンサーと声優とパソコンさえあれば、ショーのプロデュースが出来る。もはやスターは人ではなく、斬新なスタイルやファッションをデザインしたCGキャラクターだった。
 卒論のデザイン画は、職業用アニメファッションを描いた。以前研究したマネキンのトータルコーディネートと、パリのファッションが役に立った。

9 就職
 在学中、学内では同好会などいくつかあったが、特に学内で参加するような部活動はしなかった。従って新しい友人ができる機会も少なかった。アルバイトに明け暮れた二年間だった。その間いくつか嫌な思い出もあったが、最も記憶に残ることは、須波への思慕の実現のために、社会的な視野を広め、自問自答しながら、魅力ある自分探しをしたことだった。
 遅かった自我意識だが、自分らしく過ごした貴重な時間だったと思う。
 元は昨年末から就活を始めていた。近年の経済は、ここ数年間上向きで、企業は人材確保に奔走していた。学校事務局にある就職募集の掲示板には、多くの地方企業からの募集があったが、アニメファッションに関連する企業は一社も見当たらなかった。企業は専門職ではなく、即戦力としての事務職や営業職を求めていたのである。企業の職種や規模によって、基本給と有給と福祉と歩合給の比率が大きく異なっている。厳しい現実を知った。
 就活の間、改めて父を意識する機会でもあった。
 父は地元の会社に就職し、出世は平凡かもしれないが、一家の主として偉業を成し遂げているようにも見えてきた。元は自分で父を超えなくてはならないと思った。
 選択可能な職業として、工場加工生産、商業営業、建設、サービス等があった。市街地内でのマンション建設も急増し、不動産価格は上昇していた。父から得た情報であるが、不動産の手数料は三パーセントで、以前自宅購入の時に払ったという。元は不動産業は一般的に基本給は低いが、自分の努力次第で成功する可能性のある職業だと思った。
そして就職したのは『不動産・くらや』名古屋城駅前支店だった。
支店長含め従業員十五名の会社だった。
プロフィール

モザマスター

Author:モザマスター
キャフェ ド モザのマスターです!
担当はドリンクとフロアのサービスです。
花の愛好家です。
季節の花の写真をアップしています。
キャフェ ド モザのホームページ:www.cafedemoza.com

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